これは、御方ブログに寄稿させていただいていた作品の再録です。
やはりもともとは、Kさん2次作品へのコメントに載せたアイディアを脹らましたモノ。
(うちは3次だから!)
この同棲時代っていうのがすごく幸せで、平和を感じる時だと思っています。
つまり、あれだけの波瀾を超えた二人なので、これ以上二人の愛が試されるような試練はおいらは書けません。
オリンピアから
2050年代。
銀河中央星域への29回目のフォールドで、マクロス・オリンピアは、ガイノス星系に到達した。
同星系の4番目の惑星が、大気を持ち、テラフォーミングの必要はあるが、短期での開拓入植が可能な事が判明。
さらに、地球を含め、ほぼすべての星系へ直接、あるいは数回のファールドで移動可能な、フォールド回廊の入口の存在も確認され、オリンピア議会が紛糾したのは12年前。
研究と調査を兼ね、暫定的に現在の位置にとどまった船団は、フォールドの恩恵から、交易拠点、ハブ宇宙港として発展した。
その後、2059年にマクロスフロンティアがもたらしたスーパーフォールド航法による、新大航海時代の到来と共に、オリンピアは交易、産業都市としてその重要性を増し、経済的な繁栄をも享受した。
同時に情報産業の拠点となり、かっての北米大陸西海岸都市のような芸能、エンターテイメント産業の中心都市に変貌した。
2063年10月、
ユニバーサルボード配信会社の拠点移転とほぼ同時期に、銀河の妖精シェリル・ノームが、活動拠点をマクロス・オリンピアに移してから、1か月が過ぎようとしていた。
オリンピアのメインアイランドは、他の多くの船団と同じく、(実際には有事の際の防護壁だが)シェル型の巨大な帆をもつ環境船であり、
環境維持の象徴的な存在として、大きな海洋をも含んでいた。
そこはオリンピア最大の海岸都市中心部のカフェテラス。
オリジナルサイズのゼントラーディも行きかう大きな通りを見下ろす形で設けられたテラス席からは、都市の多くが見渡せる。
カフェの最も奥まったテラス席で、待ち合わせ場所に先に来ていたアルトに、シェリルが話しかける。
「ここはフロンティアともギャラクシーとも違う雰囲気ね。商業中心の大都市だからかしら?人も多いし、ちょっと変わったファッションの人も多いわ。」
「オリンピアでは一度も戦争が無いからな。50年以上平和が続いている。文化的にはユニークというより熟成しつつあるんじゃないか?」
コートをはずし座りなおしたシェリルが、薄いカードキーを差し出す。
大き目の帽子とサングラスはそのままだ。
「これ!持ってて。事務所がアパートメントを用意してくれたの。部屋に入るには、あと生体認証の登録が必要だから、あとで一緒にね?マスターキーでの操作が必要なの。」
「ホテルは引き払ったのか?」
「ええ。荷物もないから。あっ、それとさ・・・。」
オーダーを取りに来たウエイトレスにお茶を頼んでから、彼女は再び話し始める。
「ホームぺージでお仕事募集の告知出したじゃない?わりと面白い依頼があるわよ。
ライセンスを生かして、旧型VFの試乗レポとか。 これは事務所が保険額がまとまらないからNGだろうって言ってるけど。
同じような話で、フロンティアで一番高いところって、どこだか知っている?
バジュラのハイブ(赤道上にある惑星を覆うおおい)があるじゃない? 大晦日に衛星軌道くらいにある広場みたいな棚で歌ってくれって。
面白そうだから受ける事にしたわ。 たぶんVFを使うから、パイロットをお願いすると思う。年末年始はフロンティアに一緒に帰るわよ?」
シェリルは楽しそうに話を続ける。
「オリンピアは音楽番組も多いの。いくつかオファーがあるから出演していくつもり。
ライブもやりたいなあ。フロンティアで『さよならライブ』をやってからもう4ヶ月も経つもんね。」
「ね!知ってる?フロンティアの私のファンの間では、『”ちょっと” さよならライブ』って言わないと怒られるんだって!」
アルトが笑いながら答える。
「はは、俺も配信で観たけど。お前、『ちょっとだけさようなら』とか、『絶対帰ってくる』とか、何度も言ってたじゃん?フロンティアのファンは帰ってくるって思てるさ。」
「なによ、アルトは帰るつもりない・・・」話を続けるシェリルをさえぎり、
ふっと人の近づく気配を感じてアルトが振り向く。
「あの?すみません、シェリルさんですよね?」おそるおそる声をかけた女性は、ジーンズにジャケット、抱え込んだトートには書籍とノートがのぞいている。学生?
さっと立ち上がり、シェリルと女性の間に立つアルト。いや女の子というところか?
「ごめんね、彼女は今日オフだから。」長身のアルトに言われ、女性がひるむ。
「す、すみません・・」続いて立ち去ろうとした彼女に、
「すこしなら良いわよ?」とシェリルが言う。
うれしそうに顔を輝かせて、アルトを軽く押しのける様に一歩前に出る。
「私、シェリルさんのファンなんです!私もフロンティアの出身です。今はこちらの大学で勉強してます!」
「戦役の時は、シェルターで母とシェリルさんの歌を聴きました! ”ちょっとだけ”さよならライブも行きました。こっちでも応援します!がんばってください!」彼女は大急ぎで言い切ると、深々と頭を下げて走り去った。
テーブルから手を振るシェリル。
椅子を引いて座りなおすアルト。
「年のころ18-19かな?あんまり俺らと変わらないだろうな。すまん、ついシークレットサービスの癖で。ちょっと悪い事したかな。」
シェリルが微笑みながら会話を続ける。
「あら?私が同じ事はできないでしょ?護衛さんにはいつも感謝してるわ。」
「ねね、それより彼女、”ちょっとだけさよなら”だって。ふふ、やっぱりフロンティアは私の故郷なんだわ。
いいなあ、女子大生かなあ?新生活を始めてるのよねえ。」
テラス席の風が気持ちいい。
小さく伸びをしながらシェリルが言う「う~んん、平和っていいわね~。」
アルトも暖かい日差しを感じながら答える「そうだな。」
「ね!アルト。買いモノに行きましょ!お茶も飲んだし、すこし街をあるかなきゃ。」「あなた何か私にプレゼントを買いたい気分じゃない?」
「何だその急な展開は?」アルトがあきれた顔で答える。
「だって、銀河の妖精が追いかけて来たのよ?普通は何かお礼のプレゼントとかあるんじゃないの?」
「はいはい。じゃあ生活雑貨でも探しにいきますかね。」アルトが先に立ち上がり、ゆっくりとシェリルの椅子を引く。
「さあ、新生活の始まりよ!」
FIN
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- 2012/01/21(土) 17:53:25|
- 作品(マクロス小説)
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