ssうp!
ネタばれ回避で(ってもたいしたネタじゃない・・・)、コメントは追記下段に書いてあります。
ただ「あの人」の幸せも折りこんでおきたかった。
フロンティアの4月
卯ツ木泰造(うつきたいぞう・17)は、何処にでもいるヤル気のない学生だった。
「だから、僕が覇気がないのは僕のせいではない。」自分でそう思っていた。
でも、学生だからバイトくらいしなきゃあって、ある日考える。 現状での最低限のパフォーマンスだ。
調べて、応募して、訪れたのは、新しい店の接客バイトの面接だった。
行くと、そこにはさらにヤル気のなさそうな女性が面接者として待っていた。
名前はゴルゴン・ゾーラさん。 ?かなり独特な雰囲気の美人だ。
外見はかなりキツい、でも声は優しい。
「ゾーラでいいわ。」めんどうくさそうに彼女が言う。
僕の履歴書を興味なさげに見ている。そりゃあそうだろう、僕の履歴など読むべき中身が無い。だが、気怠げだった彼女が顔を上げた時、何故か笑顔になっていた。
「ねえ、この仕事じゃない別のお仕事をしてみない?」
「え?」
「おいで。」
僕は吊られた魚か何かのように、ふらふらと言われるがまま、更衣室らしい部屋へ案内される。
「はい。」そこで渡されたのは、サルスーツ!茶色で、尻尾と耳がついているあれだ。
「被りもの?」
「ただのサルスーツよ。 むこう向いててあげる。」
僕はしょうがなく、わりとぴっちりとしたスーツに何とか体を納める。
「背中のロックは私がやってあげる。」
彼女がパチンと何かをはめ込んだ音がした。
「付いて来て。」
部屋を出て、どこかに向かう廊下を進む。
前を歩くゾーラさんのお尻がかわいい。
「ガチャ」
室外?にでる扉をくぐる。そして外のベンチには、サルが20匹ほどちゃんと座っていた。
「!!」
サルが一斉にギロりと僕をにらむ。
「???」
長身の1匹が、すくっと立ち上がり、僕にどなった!
「ようし!君が、卯ツ木だな!ウッキーと呼んでやる!」
「えっええ!」
「今日から俺が上司だ!名前は猿山だ!宜しくなっ!」
「って、あんたサル? 言葉をしゃべってるよ!ゾーラさん!?」
振り向くと、いつの間にか廊下に戻ろうとしているゾーラが応えた。
「そのサルスーツを着るとみんなサルに見えるのよ。あなただって皆から見たら本物のサルよ? サルスーツを脱ぐ時は手伝ってあげる、頑張ってね~。」
「えええ!?」
ゾーラがくるりと身を翻して去っていく。
後ろから、ぽんっと肩をたたかれた。
「よし、卯ツ木!ウッきーと言いながらあの木を登るんだ!ついて来い!」
「う、うっきー?」
こうして僕はサルバイトを始めた。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・以上の様な、いつわりのサルによるサル山運営の詐欺被害が確認され、関係者が注意を呼び掛けています。
以上、本日のヘッドラインニュースで・・・」
プツッと軽いノイズ音が入り、機長の声がスピーカーから聞え始める。
『・・・皆様。当機は惑星フロンティアへのアプローチコースに入りました。
軌道宙港へは15分後の接舷となります。 長いフライトお疲れ様でした。 また、ようこそフロンティアへ。現地の天候は・・・』
機長の声を聞き流しながら、シェリルは開いた口がふさがらない。
「(変なニュースだわ・・・。かなり衝撃的だし・・・。)」
だが、見回しても、ファーストクラスの乗客はニヤニヤしたり、完全に無視してるかのどちらかだ。
今のニュースを見て無いのかしら?ありふれたニュースなのかな?しばらく離れている間にフロンティアは変な事になってない?
何だかぐるぐる考えが巡る。
今回のフライトは、いくつかの契約の更新と、打ち合わせ、メディア取材のため、オリンピアからフロンティアへの3時間の機内だった。
快適でリラックスできる航宙機内は、忙しいシェリルにとっては、ぼんやりと出来るそれなりに貴重な時間だ。
ありふれたニュースのチェックなどには最適な時間になる。
「でも何、今の?」
とは言え、接舷の軽いショックと宙港デッキへの移動などで、ニュースの事は一旦忘れてしまった。
そして、ゲートには懐かしい人が迎えに来てくれているはずだ。
入国ゲートから、ロビーを見渡す。
「(いた!)」
あいかわらずのきっちりとしたスーツ姿。間違いない。
「グレイスー!」シェリルは大きく手を振る。
近づく彼女に言葉を続けた。
「久しぶりだわ~。元気にしてたー?」
眼鏡の片側をちょっと持ち上げるしぐさを見せて、笑顔でグレイスが応えた。
「うふふ!あなたこそ。」
シェリルが両手に荷物を持っている事に気がつき、グレイスが手荷物の一つに手を差し伸べる。
「グレイス!!嬉しいわ。元気そうね。フロンティアでのお仕事はどう? 最近の子で、いい子は見つかった?」
シェリルも、お土産の手提げを渡しながら会話を続ける。
「貴女みたいな子はなかなかいないわよ。 つくづくあなたを育てたのは私の才能ね。 そうそう、彼は元気?」
「うふふ、この前プロポーズしてもらっちゃったの!」
「あら!おめでとー。そうあの子がねえ~、感慨深いわあ~。あなたも彼もあんなに小さかったのにね。 みんな大きくなったのねえ~。」
「もう!そうじゃなくてー。」
くつろいだ会話が続く。
バジュラ戦役後、グレイス・オコナーは、裁判と拘留、恩赦などの手続きを経て、今は惑星フロンティア行政府の監視下にあった。
監視猶予期間中とは言え、仕事は探さないといけない。彼女は再び芸能プロダクションの仕事に就いている。
まだ星系外への自由な移動などの許可は下りないが、フロンティア内での活動に制約はない。余計なインプラントを取り除いた彼女が、オリンピアなどの別星系に来る事も近い将来は許可されるだろう。
「こちらでの滞在は五日間ね。短い間だけど、またあなたのマネジメントが出来るなんて嬉しいわ。」
軌道上の宙港から、地上に降りるエレベーター・トレインの席につきながらグレイスが言う。
軌道エレベーターを上下する円型の垂直に並んだ列車は、360度の展望を伴った豪華な客席を設けている。外向きに並んだ客席からは、深遠の宇宙と、青く薄い大気層、輝く惑星面の青い大洋と、緑の大地が見渡せる。
かなりのスピードでの降下だが、VFでの再突入の様な乱暴な事はない。
ふかふかのソファとリラックスできる旅行着。
「(VFでの降下ほどスリリングじゃないけど、これも悪くは無いわよね。)」
シェリルは渡されたソフトドリンクに口をつけながらグレイスとの会話に興じた。
一通りの近況報告が終わった頃に、シェリルはふっと思い出した機内でのニュース番組の事をグレイスに聞いた。
「機内の録画ニュースで、フロンティアで、偽装サル軍団がサル山詐欺をしているって・・・? なんだかとってもとんでもない話で、何それ?って感じなんだけど・・・。」
グレイスの目が突然険しくなる。
「ああ、そのニュースね。 実は、政府の内部通報なんだけど、サル軍団にかなりの数で旧ギャラクシーの偽装兵が混ざっているらしいの。サル軍団がバイト募集を偽って新たなテロリストを養成しているって・・・、私の今回の仕事にも、急遽あなたをサル軍団から守る事を要請されたわ。」
「!!!?」
シェリルはわけがわからずに目を白黒させる。
「さ、サル軍団? って・・・、ギャラクシーの? そんなのあったの?」
「ええ。」
びっくりしたシェリルが覗きこんだグレイスの目は、だが笑っていた。
「・・・、グレイス? 私をからかってる?」
「いやあねえ、最初から最後まで、四月バカよ。」
「・・・、うそ?」
グレイスの含み笑いとともに、エレベーター・トレインは快適な降下を続けていく。
・ ・・・・・・・・・・・・・・
「こらー!ウッキー!! そんなへっぴり腰じゃあターザンジャンプはできないぞ!」
「うううう、うっきーっっ!!」
僕は泣きそうになりながらジャンプした。
FIN
はい!エイプリルフールねたです!
バレンタインも、ホワイトデーも、クリスマスだって書かないのに?何で4月バカ?
しかも前段と最後のうっきーは何?
ええ、自分でもわかりません。
グレイスが書きたかっただけなんで・・・。
さあ、今日はこれから花見に千葉まで行って来る!忙しいなあ・・・。
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- 2012/04/01(日) 05:52:30|
- 作品(マクロス小説)
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