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ううん酸

とりまシェリル・ノームのファンサイトです。うさんくさい?

決戦前夜36<あなたの>

前夜35、この続きです。

これで半年かけたこのシリーズはオシマイです。いいわけは後で、とりあえずUP。
ここまで読んで頂けた方々に感謝いたします。お時間をさいて頂いただけで、もう感謝感激です。
では、よろしければ「続き」から。
ほんとうにありがとうございましたーーーー。

わたしが・・・、
この子の・・・、シェリルのためなら何でもやるって思ったのはいつだった?
つい最近もそんな想いをあらたにした。

ああ・・・そう、あの羽衣の写真だ。
シェリルが医療ポッドから抜け出して、ぼんやりと見つめていた。
彼女が、自らのケー鯛に表示させて見つめていたビジュアルは、早乙女アルトの羽衣だった。

あのギャラクシーでの公演当時、歌舞伎を見に行こうって、誘ったのは私だった。
だから、シェリルがとっても気に入ってくれて何度もなんども劇場に行きたがり、何回目かで(・・・ううん、ちゃんと覚えている。全5公演の3日目だ)彼の楽屋まで行きたいって言い出したときも、ちょっと嬉しかったのだ。
お目当ての彼と会って、別れて。 その後、しばらくは写真を繰り返して見たり、歌舞伎関連のニュースを追ったりする。 その、淡い恋心みたいなシェリルの様子も、微笑ましくて。


だから、フロンティアで早乙女アルトと再会した時、「ああ、シェリルの初恋の彼がこんなに立派に。」って、そう思った。

でも、ボディガードとか、作戦と称したデートとかに送り出して、楽しそうなシェリルを見ていて・・・。 わたしの手から離れていくようで不安だった・・・。

そして、何度も彼の写真を見ながら泣きそうな顔をするシェリル。
そう。
わたしは知っていたわ、何度もなんども彼の写真を見て哀しそうな表情を浮かべる彼女を。
いつかは別れなければならない人への、あの娘の想いを。

だから・・・、やっぱりあんな男にシェリルは任せられない。
あんな雨の中、私のシェリルを突き飛ばして、さ迷わせる様な男には・・・。
誤解を解いたあと、シェリルがどんなに楽しそうであったとしても、許せない。
シェリルにこんな想いをさせるなんて・・・。
やっぱり私が守らなきゃ・・・




「"聞こえる?グレイス"」

・・・、 『わたし』だ。
私の一人。わたしのコピー。
このグレイスも、私の被害者の一人か。
でも、わたしは応えない。 だれが応じてやるものか。
余計な留守電メッセージだけで充分だ。

「"聞いてグレイス・・・"」
金色のマイクが話し続けた。 マイクを通じて声が届く。
音量は小さいものだが、ステージでの通話の想定もされている、所持者には良く聞こえるような指向性仕様になっていた。

今度は、向こう側がハッキングして使っているのか。
「まったく両刃なんだから・・・。」
暗い、半ば瓦礫に埋もれた地下街を、グレイスは一人で歩く。




そのはるか上空・・・。
ランカが必死に歌っていた。 通じている!わたしの歌だってバジュラに。
ああ・・・、アルトくんが開いてくれた!
バジュラ達が応えてくれる。

「!」
だが、その次の瞬間、被弾したアルトの機体が、彼女の目に映る。
ステージの部分モニターが拡大する画像も、彼女の肉眼がとらえたそれも、アルトの赤い機体に間違いはなかった。

ドッ!
アルトの機体に衝撃が走る。
スーパーパックに被弾?
いや、どちらかと言えば接近したバジュラに殴られたというのが正しいのか。

近接位置からのショートストロークでの攻撃。
バジュラも相撃ちを恐れたのだろう。いや、それ以前にこれだけ接近を許した自分がふがいなかった。
この距離では、機体のエネルギー装甲と慣性制御での対攻撃防御が間に合わない。
アルトは凄まじい衝撃に翻弄されて、墜ちて行った。

「アルトくん!」
ランカの叫びが確かに彼の耳に聞こえた。
「(だめだ、歌を止めちゃだめだ。歌い続けてくれ、ランカ!)」
薄れる意識の中で、アルトが声にならない叫びをあげる。

「(シェリルが、シェリルが、聴いている。 だから・・・、)」




「シェリル。おいっ、シェリル、大丈夫か?」オズマが声をかける。
休ませてやりたいがこの状況ではそうも行かない。
近くでドンパチやっているバカどもがいる。
「う・・・んっ・・・」薄く、シェリルがその目を開ける。




「はあ、はあ、はっ、はっ・・・、」マリが呼吸を整える。
自動走行とはいえ、少なからずマリの手足も動く。傷ついた体での運動だ、当然息があがる。
カチャ・・・、EXギアから小さく音が漏れる。
警戒しながらマリは数十メートル先を覗き込む。
横たわるシェリルと、そこにひざまずくオズマがいた。

囚人服のワークウェア、無粋なワークブーツ。グレーだか黒だかのタンクトップ・・・それでも、トップにまとめているピンクのポニーテールが輝く・・・、シェリルだ。
どんなに遠いところからでも見間違える事はないだろう。
シェリルだ。

「(見つけたわよ、グレイス。)」マリが、グレイスに話しかける。
ええ、ええ・・・生きていた・・・、生きていた。
マリの中のグレイスの想いが、すでに言葉にはならない感情というモノで伝わってくる。
シェリルが生きていた! 
そうして、マリの中のグレイスはしばらく泣いていた。


「”マリ・・・、聞いて。彼女が、もう一人のグレイスが、まだシェリルを襲うなら、もう一度わたしのウィルス弾を使う。トマホークのときは着弾していないのよ。でなきゃ彼女が・・・、グレイスがあのままなのは納得できないわ。”」
マリの中のグレイスはそう言うと、バイザーの表示をスクロールさせて、地下の廃墟をこちらにやってくる、もう一人のグレイスの光点を表示する。
それから、再びステージマイクを経由させて、彼女に話しかけ始めた。

「"グレイス?聞こえているでしょ? シェリルは生きているわ。 ね、もう一度言わせて。シェリルを開放してあげて。"」
だが、呼びかけられた方のグレイスは、シェリルのマイクから聞こえる小さい声を無視する。


ボロボロのコートを被り、壊れかけた彼女は、立ち止まり崩れた通路の先を見上げていた。
瓦礫で埋もれているが、地上へと伸びる階段があった。
この上にシェリルが居る。
傷付いたあの子がいる・・・。


「"グレイス・・・、あのね。あなたも幸せになっていいのよ?"」
呼び掛けるコピーの声が、涙ぐんでいる。
「"あなたが大切に育てたシェリルは、いつか私達の元を離れて巣立って行くの。その相手が早乙女アルトかどうかは別にして、いつかは愛する人と一緒になる。そして子供を育むの。"」

何を言い出す?

「"想像して!グレイス。 あの子は母親になる事ができるのよ。わたしもあなたも果たせないけど、あの子にはそれが出来る。
あなたが大事に大事に育てたからよ。 ねっ?そうでしょ?
あの子が、あの子の赤ちゃんを連れてくるの。 かわいい、かわいいって・・・。
だから・・・ねえ、どうしてその未来に『わたし』が一緒にいちゃいけないの? あの子は私が育てたのよ? あなたが・・・あなたが育てたのよ?"」

何を・・・。

「"とっても・・・、優しくて、きれいな、いい子に育ったのよ?"」
涙があふれる。暗い空間にポツリ、ぽつりって。
「"グレイス、ねえ! 聞いているの?"」

「・・・。」
そう・・・、たしかにこのコピー・グレイスは被害者なのだろう。
抽出された、善良な私・・・、たぶん愛すべきグレイス・・・。

けれど、わたしは・・・ちがう。


「”ねえ!グレイス、お願い。 もうやめましょう。”」



「ふんっ! なら!止めてごらんなさいよ!偽者のくせに!」
ガッ!
地下から、埋もれた階段をかけ上がり瓦礫を払いのける、地上に起立する。
EXギア兵用の大きめのアサルトライフルを引き抜く。
そのまま片手で、唸る様にライフルを振り回し、方向を定める。

数メートル先にシェリルがいた。
「(グレイス?)」
声は聞こえなかったが、シェリルの唇がそう動くのが見えた。

その姿が、グレイスには嬉しかった。
やっと会えた・・・ 元気そうじゃない・・・。


「グレイス!!」
マリの押し込まれた怒声がオリジナル・グレイスのマイクに届くのと、マリとコピー・グレイスの放った銀色の弾丸が、今度こそグレイスに届いたのは、同時だった。

着弾の衝撃でグレイスの頭が大きくのけぞる。
貫通力の高くない銃弾は、潰れる事で、グレイスの側頭部頭蓋を破り、そこに止どまった。
倒れるグレイスの手が、反射と反動で・・・マリのいる方向へ銃撃を放つ。
そして、グレイスの手から滑り落ちたアサルトライフルを、オズマがすくいあげて狙撃方向への反撃、発砲をする。

この距離では、銃撃がシェリルを狙ったのか、グレイスを撃ったのかは分からない。だが再び発砲されればこちらは丸見えだ。
タタンっ!
さらに二正射をオズマは撃った。


崩れ落ちるグレイスを垣間見たマリは、だが次の瞬間、自分も崩れ落ちていくことに気が付く。
頭部をかすった弾は装甲が弾き返していたが、左脇の着弾は疲弊したEXギア装甲を貫通していた。

銃撃?いったいどこから。
オズマ・・・?
「(バカ、さっきからあんたを助けてあげてたのはこの私よ?)」
っ・・・座りこむ様に倒れる。
「”マリ!! やだ、でペンしぶるが・・・マリ!!」


マリの銃弾を受けた、一方のオリジナル・グレイスも、やはり一瞬、意識が切り離される。
それは何千分の一の時間だったが、衝撃と混乱した痛覚を整理するには、必要な措置だった。
そして続く何千分の一秒で情報を取り戻した同じグレイスを迎えたのは、シェリルとの何千という思い出だった。
それは、アルバムをめくるようなはっきりとした記憶。 泣いたり、笑ったりしてくれたシェリルの思い出。一つ一つが輝く一緒に歩んだ記憶・・・。
「(ああ、この記憶はどこに置いてきちゃったの・・・)」


・・・誰かが応じてくれる。
『思い出して・・・グレイス。本当の自分を。 あの子はあなたが育てたのよ・・・シェリル、シェリルって・・・わたしのかわいいシェリルって・・・』

そう、あの子を育てたのは・・・



「"マリ!マリ大丈夫!"」
グレイスの悲鳴が聞こえる。マリは返事をする。
「大丈夫よ。」
息が荒い・・・、疲弊度がはんぱない。
「止血して・・・ちょうだい・・・」
脇腹があつい。倒れこんだEXギアは瓦礫に力なくもたれている。
「"マリ!医療ドローンがすぐ来るから、もうちょっと頑張って、ね? お願いよ・・・。"」
グレイスが励ましてくれる。
そしてマリが見る廃墟の真ん中に、グレイスを抱きしめるシェリルがいた。
フォールド・クオーツのイヤリングを、シェリルが受け取る。
そして・・・シェリルがマイクを取る。
そのイヤリングを身に着ける。
グレイスの手が力なく滑り落ちる・・・。


「グレイス・・・、あっちのグレイスは?」
「"大丈夫よ。ほとんど機能停止しているけど、死んじゃいない。"」
「ふっ・・・」ちょっと笑みが浮かぶ。
でも、こっちも死にそうだわ・・・。



そして・・・ほっきょくせいがもえて・・・、そのあとおうじさまがむかえにきた・・・







だいぶ時間が経ったのか?
自分の姿勢は変わらない。さっきまでシェリルが歌を歌ってくれていた・・・。

「"大丈夫?"」
グレイスの不安げな呼び掛けが聞こえる。 
自由にならない自分の体に困惑しながらも、それでもマリはどうして自分の意識が戻ったのか、何で自分がここにいるのかが分かった。

歌がきこえる・・・
シェリルと、ランカの歌が、きこえる。
二人が歌っている。
一緒に・・・。

ランカがいれば、シェリルも歌い続けられる・・・。
そして、シェリルの想い人も空で舞う。


「グレイス・・・」
「"マリ!ああ、良かった。今ドローンが来るから。 あと生き残った自動化兵が4体あるの。こっちに向かわせている。フロンティアの人達も無事よ。"」
「ドローンが来るんでしょ?EXギアは不要だわ・・・。パパとママは無事?」
「"ええ、中央第3シェルターよ。"」
「EXギアはそっちに行かせて。私は大丈夫よ。」
「"マリ・・・、ごめんね、ゴメンね。"」
「バカね、そうせずにいられなかっただけよ・・・ 」



さあ、グレイス・・・、静かに歌を聴きましょう。
二人の歌が銀河を震わせているのだから。

だから・・・



完!
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  1. 2013/11/24(日) 07:27:59|
  2. 作品(マクロス小説)
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アルトとシェリルでSF風ショートショートがメインです。
ちょこっとフイギュアとかに逃げる時があります。
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