さて、わりと自由時間のとれるGWで、なんだか書けてます。ナンだ?オレ電車でなくても書けるじゃん?
そんなわけで邂逅篇はこのあたりまでで、そろそろ話が動き出します。
今悩んでいるのは、マリにガツガツ活躍してもらうための動機!なんかきっかけを書き足したい・・・。
というわけで、よろしければぜひ。感想などもいただけると嬉しいです。
現在カキカキ中のSSです。当面TOPに置きます。
決戦前夜1 <墜落>決戦前夜2 <睡魔と魔女>決戦前夜3 <魔女とお話>決戦前夜4 <魔法の対価>
「"あの子は孤児だったのよ。"」
〈魔法の対価〉
「はああ?オーディションは中止?」
「うう~ん、肝心の、シェリルが逮捕じゃあさ? いやいや~、そんな怖い顔しないでよ。
追加公演そのものが無いし、もともと臨時の欠員募集だからさあ~。」
怒気をはらんだマリに、若い(と言ってもマリよりは年上の)ADがしゃあしゃあと応える。
なんだこいつ!たかだかアシスタント・ディレクターのくせに!
「ったく!あんたと違って、こっちにとっては数少ないチャンスなのよ? 勘弁してよ!!」
昨夜の、こちらの問い合わせに対して、うやむやな返事しかなかったから、こうやって出向いて来ているのだ。
スタッフのいい加減な対応が頭に来る。
もっとも、この業界は常にこのノリだ。
情報収集は運任せ、運も実力のウチ! ったく!
早々にオーディションを諦めて、スタジオに来もしない同僚のヘレンが、なんだか憎らしい。
「"オーディションの前に、飲んだくれてたバチじゃないの?"」
「はいはい、反省してるわ。おかげで頭の中でへんな地雷踏んじゃたし。」
シェリル・ノーム追加公演の、欠員ダンサー選考が行われるはずだった放送局スタジオ。
その廊下を、怒気をはらんで進むマリに、グレイスがちゃちゃを入れる。
昨夜、グレイスから、ギャラクシーでのシェリルの話を聞いた。
孤児だったシェリル。グレイスが引き取ってからの彼女の努力。
報道の内容に関して聞くと、グレイスには少なからず、ギャラクシー政府の意向を汲んでの活動があったらしい。(スパイ?・・・)
フロンティアと、ギャラクシーは、ほぼ並走しながら、同じ銀河中央星域を進んでいる。
いわば隣国同士だ。
広い銀河で、どうしてそんな事になるのか、あるいは広いがゆえにだろう。
フォールド断層による航路の限定や、補給可能な恒星系の存在、深宇宙での孤独などが、両者に暗黙に作用した。
二つの船団は、お互いが、フォールド航法で数時間程度の距離にその存在を置きながら航海を続けた。
古来から、隣国とは、利害が一致したり、一方の利が、他方の害となったりする存在・・・。
バジュラ襲来後の両船団は、難民となったギャラクシーと、比較的軽微な損害ですんでいるフロンティアの間で、確執が目立ち始めていた。
「”信じて。 少なくともシェリルにはスパイの仕事なんてさせてないわ! 彼女は純粋に歌と、ファンを愛しているの。”
“彼女自身がそうであったように、歌がみんなの救いになるって、本当に信じているのよ。”」
昨夜のグレイスの言葉はそう締めくくられた。
でも、グレイスを当局に引き渡さない本当の理由も別にある。
もともと、マリの脊髄周辺に納まっているインプラントは違法品なのだ。
マリとしても、テロ容疑者を捕まえましたと、警察に出ていくのは、やはりやりづらい。
もう一つは、グレイスの話通りだとすると、今のグレイスは、とやかく言うこと以外には大したことはできない。(ドラッグ・インプラントとして、マリを「”気持ちよく”」させることはできるらしいが・・・。)
そして、テロとの関連は、やはりあやふやだ。
バックアップのグレイスを、違法インプラント内に用意したのは、どうやらオリジナル・グレイスの個人的な手配だったらしい。
オリジナルとの分岐は、2週間前まで逆上る。
違法インプラントに、最初から仕込まれたバックアップ・グレイスは、オリジナル・グレイスからの発信が途切れたところで、強制『起動』させられた。
それが一昨日。
バックアップの彼女自身も、この2週間で何が進んだかの認識はない。
「”自分が何を考えて、この状況でどう行動したか。 推理しなきゃいけないのよ?けっこう大変だわ。”」
昨夜のグレイスとの会話のまとめだ。
そのグレイスが、あいかわらず怒りが治まらない顔の、マリに言う。
「"しばらくここにいてちょうだい。 情報収集しやすいわ。さすが放送局!フリースポットのアクセスも早い。"」
「ハッキング?」
「"あら?これは正規の状況探索だわ。新聞とか掲示板を読むみたいなものね。"」
今のグレイス(マリの知っているバックアップ版)は、ナノサイズチューブに納っている。
全長は20m近い超極々細の糸みたいな、人格データの固まりだ。
マリの背中から首回り、頭頂にかけて、血管の中を延々と伝い、とぐろを巻いてる。
「(それもゾッとしないわね。何でこんなもの入れちゃったのかしら?)」
「私向けの有益情報はないの?」
「"う~んん・・・。 あら? あった。 ランカ・リーの録画ステージで欠員が出てるわ。
テロ事件の影響かな。 2スタの控室に彼女のマネージャーが居るわ。売込んでみたら?"」
「やった!『シェリルのオーディションで採用されてました!』ってくらい、言っても大丈夫よね?」
「"オーディションがどこで中止になったかなんて情報は無さそうね。 イケるんじゃない?"」
「いいわ。しばらく局内にいてあげる。」
「"お願い。"」
「"(2週間前か・・・。フェアリー9とコードQ1の問題を報告したあたりね。私自身がバックアップを切り離した記憶が無い。オリジナルにも何かが起きたんだ・・・。)"」
グレイスの、今はありもしない背筋に、悪寒がはしる。
続く!
次回、ランカ登場!!
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- 2013/05/03(金) 19:08:39|
- 作品(マクロス小説)
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