さて、予告?通りうp。
後半は、がんばってアクション中です。来週になっちゃうと思う。
こうね、書いてる人は情景が頭に浮んで書いてるんだけど、文章でちゃんとそれ(情景)が伝わるかどうか・・・、
そんな基本的なあたりが不安です。
すこし、風景とか、人物描写書き込みたいけど、それは小説家の仕事だね。
おいらは皆さんとすでに背景を共有しているからいいのさ~、って開き直り?
さあ、想像力を駆り立ててと。よろしければどぞ。
前段はこちら↓ まあ読まなくても大丈夫な内容だけど。
分校物語1分校物語3
その1;ゴーストとフェアリー
小さい頃から、ダイアナ・バリーはパイロットに憧れていた。
父が、旅客航宙機パイロットだったのだ。
颯爽(さっそう)と帰宅する父と、フライトのつどに持ち帰る、他船団や、遠い惑星の珍しいお土産が嬉しかった。
父のようなパイロットになりたいと、ずっと思っていた。
「パパの会社の制服は、ダイアナの髪の色にも似合うわ。」
なんて、母が言うものだから、なおさらだ。
そのための努力をしようと決意したのは、高校進学の時。
難関校だったが、美星学園高等部 航宙学科に合格した時は、夢に近づいた実感で体が震えた。
そして、バジュラ戦役で学業が中断される。
混乱が終結し、新しい惑星で復興が始まり、他の学科に遅れて航宙科が再開すると知らされた時は、心から喜んだ。
航宙機シミュレーターなどの都合で、軍基地隣接の、新空港内に分校を設けて・・・、という条件はあったが、贅沢は言わない。
そんな久しぶりのクラスで、友達との再会を喜び合い、失った友達に涙し、他船団、他星系への移住などで、復学が果たせなかった友人との別れが一段落し、授業がやっと始まって、しばらくした頃。
その転入生と、遅れて復学した男子生徒が、そっとやってきた。
「早乙女シェリルです。」
皆よりも数ヶ月遅れて復学した早乙女アルトの挨拶に続いて、自己紹介をした女性は、アルトの陰に半ば隠れるようにして挨拶をした。
長い髪をすべて制帽に納め、緊張した面持ちでも、彼女が、全銀河を魅了したあのシェリル・ノーム、その人であることに間違いはない。
20数名の航宙科クラス全員の時間が止る。
「(早乙女?って。 シェ・・・、シェリル?)」
「(シェリル?)」
「えっえええー?」
最初の一週間、ずっと二人は一緒だった。何をするのも一緒。
彼女の雰囲気も、メディアで活躍していた頃の、シェリル・ノームのイメージとはちょっと違う。
二人とも少し身構えた雰囲気があった。
別にいちゃいちゃしている訳じゃない。
ただ・・・、なんだろう。 戸惑っている?
シェリルだって、戦役の前は、体験訪問とか理由をつけて、何回か当時の学校に遊びに来た事があった。
アルトや航宙科の面々を、からかっていくものだから、そのたびに学園は大騒ぎになった。
その頃の華やいだ雰囲気はない。
アルトの復学は戦役からかなりの期間を空けていたし、シェリルの転入は?
学校からの説明も、本人達の説明もあやふやなものだった。
「(いろいろあったからかな?)」
よくわからないながらも、遠巻きにしつつダイアナはそう考えていた。
「(だいたいシェリル・ノームが早乙女家の遠い親戚って?)」
アルトとシェリルの関係を、学校側は親戚だからと、そう説明していた。
そんな日常も、航空機実習を前に、シェリルがクラスの女子に声をかけ始めたあたりから変わり始める。
「ねえ。実習の準備に必要な事って、教えてもらってもいい?」
クラスの数少ない女子生徒は、すぐにシェリルを仲間に加え、空港分校の授業は少しずつ進みはじめた。
ダイアナがシェリルと会話を始めたのも、その頃だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「シェ~リルっ!」
明るめのブルネットの髪、白基調のLAI系航空会社の制服で、女性パイロットが、ラウンジを歩くシェリルを呼ぶ。
短いフロンティアでの滞在を終えて、シェリルはオリンピアへの帰路に着くところだ。
契約打合せと、メディア取材を受けた今回のビジネス旅行の帰りは、フロンティア首都空港から、宙域のフォールドポイントを経由して、オリンピア船団の宙港まで飛ぶダイレクト便だ。
乗換えのないフライトは短時間ですむが、コストはその分割高になる。
フロンティアでマネジメントをしてくれた、グレイス・オコナーとも、この地上空港でお別れだ。
呼びかけに振り返ったシェリルの顔に、笑顔が広がる。
「ダイアナ! 久しぶりね!元気なの?」
制服姿のダイアナ・バリーが笑顔で近づきながら応える。
「もう! こっちに帰ってたら声かけてよね。 今日の便は私がパイロットだから、オリンピアでも時間はあるけど。 少しは時間割いてよ? 歌姫さま。」
「ええっ・・・って、あなたが飛ばすの?」
「何? 信じられない? もうベテランよ。 だいいち、広報取材もするから同窓のパイロットをって、そちらのリクエストで私がシフトに入ったのよ?」
ダイアナがグレイスに会釈をしながら言う。
「あら?」シェリルがちらりとグレイスをにらむ。
ダイアナに視線を戻して応える。
「いいえ、あなたがパイロットなら安心だわ。アルトにも報告できる。」
「うふふふー、ありがと! あとでシートに挨拶に行くわね。」
ダイアナは、自分のキャリーバックを従えて手を振りながら、搭乗口へと去っていった。
「学生時代の知り合い?」グレイスがとりすました様子で言う。
「何よ、手配したのはグレイスでしょ?調べたくせに~。
ええ、ダイアナとはよく一緒に飛んだの・・・。 EXギアでの実習とか懐かしいわ。」
シェリルは、空港ラウンジの展望デッキから、初夏を思わせる青空に視線を向けた。
「高高度訓練とかは、ちょっとした冒険だったのよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
ダイアナから見るアルトは、卒業資格を取るためと、恋人と一緒にいるための復学だった。
時に軍関係の副業もこなしながら、学生生活を送っている。 もともと単位制の学校であり、そういう意味では勝手が効く。
学校では、指導教員役も務めており、学生だか、講師だか、とにかく忙しくしていた。
一方のシェリルについては、努力家だったんだと・・・、あらためて感心してしまう。
すさまじい勢いで学科の学習をこなし、実技訓練のスキルも積み上げて行った。
運動能力や、動態視力などは、ダイアナの比ではない。
そうして、数ヶ月が過ぎた頃。
遅れてスタートしたシェリルも、ファースト・ソロ(単独飛行)をとっくに終えて、クロスカントリー、夜間飛行訓練などのステップをこなしていた。
今日は、シェリルとダイアナで、一緒に「IP‐I/F(知能的受動インターフェース)操縦課程」の最終実習を受ける日だ。
バディを組んでの高高度域での実習。 EXギアによる、長い滑空実技である。
この実習が終われば、次は練習機とは言え、実際の往還機での訓練に入る。
「(旧型だけど、VFの練習機を操れる!)」
ダイアナの旅客機パイロットへの夢が近付く。
「(シェリルは何を目指して、このパイロット課程を取っているのだろう?)」
ダイアナはぼんやりと、この同姓から見ても、たいへんな美貌の彼女を見つめる。
二人を乗せた軍規格の兵員輸送機は、徐々に目標高度に向かい上昇していた。
高度20キロ超の高高度空域へ。
その高さは、地上に鎮座するアイランドワンの、天蓋高度の10倍超。
装備はすでに地上飛行用の軽装仕様ではなく、真空中に曝(さら)されても対応可能なフル規格のパイロットスーツだ。
滑空前の装備点検などはすでに終えていた。今は待機時間だ。
輸送機内でのダイアナの観察が続く。
スタイルだって、真空防曝仕様のパイロットスーツで、これだけすらりとして見えるのだ。
「(それとも立ち振る舞いの影響かな?)」
この数ヶ月で四人の女子生徒達はすごく仲良くなっている。
接してみれば、皆、あっという間に、シェリルの所作や、毅然とした姿勢と優しさ、人柄の良さ、そしてその美貌に魅入られてしまう。
アルトとの関係もごくごく自然であり、嫌味な事はまったく無い。
「(ああ、こんな風に周囲を変えてゆく人っているんだ・・・。)」って何度も思う。
そう広くない輸送機のシートで、できるだけリラックスできる姿勢を探そうと、もぞもぞしていたシェリルが、ダイアナの視線に気がつく。
ダイアナと目が合うと、シェリルが「何?」と小首をかしげる。
「(ほら、そんな仕草がすでに人を魅了するわ・・・。)」
ダイアナは、慌てて言葉を捜した。
「アルトくんが居なくてさびしいわね?」
「いいのよ、あんな鬼教官。」
アルトはSMSの仕事に回っている。
インターン実習で単位の取得ができる実技科目は、積極的にそうしていた。
「最近はちょっと口煩くて。 嫌になるわ。」
シェリルの物言いはすこし拗ねた雰囲気だ。
その言い方をほほえましく思いながら、ダイアナが言葉を続ける。
「そうね。彼は、あなたには遠慮しないから。」
ふん!というシェリルの吐息が聞こえた気がする。
「この間もね、『何の為にパイロットになるんだ!』みたいな事言われてさ。 『あんたに負けたくないからよ!』って答えたの。もう、そこから大げんか。」
「あらあら。」
「私の言い方が悪いのは分かっているんだけど・・・」
シェリルの言葉は少し寂しそうだった。
「ザッ・・・」二人のヘルメットインカムに軽いノイズ音が入り、自動的にノイズキャンセリングが働く。
男性の声が聞こえる。
「お二人さん! こちら地上管制。 オリンピア支援派遣部隊のギル・ブライス中尉だ。
今日は管制の代理当番でね。 滑空訓練の面倒をみるのでよろしく。」
「こんにちは、ブライス中尉!よろしくお願いします。 美星学園訓練生のダイアナ・バリーです。」
「こんにちは、同じく訓練生の早乙女シェリルです。」
ダイアナと、シェリルが交互に、挨拶を返す。
EXギア装備だと、地上管制との通信は音声のみだ。
「よろしく! 今日は高高度からのEXギアによる滑空訓練だな。 限られたエネルギーと時間で、大気圏上層部からの下降技術が試される。」
ブライス中尉は手元の飛行計画でも見ているのだろう、なんとなく教官じみた言葉使いになっている。
「高高度からの滑空飛行だ。案外とブレーキを掛けながらの降下は思った様に降りられないものだよ。 ああ、あと注意してくれ。 フロンティア上空は、先の戦役で宙域を含めてデブリが多い。滞空中は十分な注意が必要だ。」
ダイアナとシェリルは、ヘルメットのバイザーを降ろし、EXギアの装備確認の最終チェックを始める。
滑空ポイントが近づいて来たのだ。
のんびりとしたギル・ブライス中尉の声が続く。
「早乙女シェリル訓練生は、SMSの早乙女少尉とは兄妹なのかな?」
シェリルがダイアナと顔を見合わせる。
シェリルが面白そうな顔をして見せた。
「いいえ、妻ですの。」
「えっ?」しばしの沈黙・・・。
「これは失礼した。早乙女なんて、珍しい名前だと思って。」
「どう致しまして、主人がいつもお世話になっています。」
シェリルが会話を続ける。
「学生結婚ですのよ。」
気取って答えるシェリルの口調に、ダイアナがクスクス笑っているのが聞えた。
「目標高度に到達しました。後部ハッチを開けます。」
地上管制との会話に割り込む様に、オート(自動輸送機)の声がインカムに入る。
この輸送機は擬似AI(人口知能)が操っている。
「了解!!」ダイアナと、シェリルが声を合わせて答える。
ガコンッ・・・、重く短い機械音の後に、ザッと空気が流れた。
瞬時に、弱いピンポイントバリアーが、機体後部に目に見えない風よけのカウリングを形成する。
身構える様な風の巻込みはおきない。
開かれた降下デッキで、射出レールのラッチを掴んだ二人の目の前に、フロンティアの大地が大パノラマとして飛び込んで来た。
「いつ見ても、すごいわ!」
「大地が・・・、地平線が丸いわね。」
この高度から見る惑星は、それが球体で在る事が見て取れる。
大きな丸い惑星が足元にあるのだ。
赤い大地と、点在する緑、そして7割を占める海洋のブルー。
頭上に広がる空は、すでに濃紺を通り越して、黒に近い。
星々の瞬きも薄い大気の揺らめきの向こうに見えそうだ。
「もう宇宙だわ。」
シェリルが小さくつぶやいた。
地上管制から、ギル・ブライス中尉の声が入る。
「奥様~、順番に降下どうぞ! 降りて来たらぜひお会いしたいね。」
「あら?主人に言付けるわよ!」
シェリルが後部デッキの端に移りながら言い返す。
「ええ!あの鬼教官に? じゃあ、遠慮しておくかな~。」ギルが茶化した口調で答えた。
そう言えばアルトは、新統合軍でもたまに教育隊の臨時教官の仕事に就いている。
その事を言っているのだろう。
「どこでも鬼教官なんだわ。」
シェリルとダイアナは再び顔を見合わせて笑った。
そして、
「お先に!」
シェリルが、射出レールをつかみ、軽い助走のあとに、かろやかにフロンティアの濃紺の空に吸い込まれて行った。
ダイアナも、一つ深呼吸をして、シェリルに続く。
「ダイアナ・バリー、行きまーす!」
中空に飛出したダイアナの足元で、輸送機はあっという間に小さくなった。
輸送機のシルエットが点になる所まで、降下を継続する。
安全距離を確認し、ダイアナは自らの翼を広げて、EXギアの低温核融合ユニットに火を入れる。
とたんに力強く、大気を捕らえた翼が踏ん張り始める。
翼がブレーキとなり、滑空飛行に移る。
「(大気をコントロールする醍醐味よね。)」この瞬間が彼女は大好きだった。
少し下方を飛ぶシェリルを目視で確認すると、ダイアナは自身をシェリルに寄せていった。
微弱なピンポイントバリアーが風防カウルを作っているが、大きな翼と、エンジンパックに人が吊り下がった飛行姿勢は、地上近辺を飛ぶときのEXギアと変わらない。
気持ちの良い空だ。
澄み渡った大気には、荒れた空気はどこにも無かった。
滑空するシェリルから、かろやかなハミングが聞える。リズムをとっているだけで歌にはなっていない。
でも、これはあのシェリルからあふれる音楽だ。しばしその優しい調べに耳を傾ける。
「管制? 11時方向に何か飛んでいる!」
そんなのんびりとした雰囲気を破ったのは、シェリル自身の声だった。
「えっ? ええっと、10時方向?」
地上のブライス中尉の反応はちょっと慌てている。
シェリルの声に同じようにびっくりしたダイアナは、自分を棚に上げて思う。
「(さては、中尉、聴き入ってたわね?)」
だが、シェリルの指し示す物体をみて、ダイアナは硬直した。
「何? あれ?」
シェリルとダイアナの前方、数kmに漂う、その飛行物体は、薄い赤地にすすけた緑色のライン。 所々がひしゃげているが、全体は平らな流線型だ。
大きさは・・・、VFを2、3機横に並べたくらい? 長大な全身翼で、中央を大きくたわませ、翼端がほぼ真上を向くほどしなっている。
機体から漏れ出たケーブルを、何本か空中に引きずり、まるで中空を漂う毒クラゲか何かの様?
「幽霊船?」
「大破した軍用の飛行艇みたいだけど・・・。 ギャラクシーのデザインに見えるわ。」
ダイアナの言葉に、シェリルが不安げに応えた。
続く!
→書いた!!
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- 2012/05/30(水) 23:36:40|
- 作品(マクロス小説)
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