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ううん酸

とりまシェリル・ノームのファンサイトです。うさんくさい?

惑星フロンティアから

これ!実質処女作です。昨年10月に某様から「(そんなに言うなら)書けば良いのに。」といわれて書いちゃった・・・。
いろいろ恥ずかしいんだけど、「退屈な表現」と「必要な表現」の区別がいまだにわからなくて。
現在もなるべく簡素に書こうと書こうと努めてますが・・・、ゆえに小説というよりシナリオ本みたになってないか?うう、不満がつのる。
でもこの手の冒険調が本当は好きです。OVAみたいなショート作品をイメージ。エンディングでシェリルの衛星軌道ライブとか入ると綺麗にまとまらないかなあ。




惑星フロンティアから


拡大する人類圏(人類側ゼントラーディを含む)に於いて、惑星ごとに違う自転、公転を無視し、カレンダーの統一を図るのは、もはや不可能だった。
とはいえ統一的な銀河標準時を決めるのに、地球の自転周期、公転周期を基準とする以外に方法も無く、人々にとって、クリスマスから年末へと続く休暇と、新年という時間は共通のものだった。
その年、音楽活動の充実を図るためにマクロス・オリンピアに拠点を移していた「銀河の妖精」シェリル・ノームは、TV番組への出演と休暇のため、再び惑星フロンティアに降り立った。

二人の乗るリムジンは、宇宙港から惑星首都へと向かっている。
最新型旅客航宙機でのフライトは、最上級の部類であったが、シェリルには軽いフォールド酔いの頭痛が残る。
「半年もたっていないのに、ずいぶん変わったわね。」
SMSマクロス・オリンピア支社の指示で(正確にはクライアントの指示と、指名によるが)、シェリルに帯同する早乙女アルトが答える。
「計画通りなんだろうけど、確かに早いな。」
「何かを押しのけたり、いじめたりしてないと良いんだけど。」
「環境問題か? 政府は・・・。」
機内で流れていたニュースダイジェストを思い出しながらシェリルがさえぎる。
「フォールド酔いで気分がよくなくいの。 違う話題がいいな。」
「ふむ・・・。」
車は静かにハイウエイを進む。

「明日会う人物だが、企画書読んだか?」
アルトが資料を収めたパッドを広げながら話し始めた。
「マイケル・ベア、 新統合軍大学校の物理工学部を卒業、ドクター。卒業後2年間の軍関係研究所勤務を経て、民間企業へ移籍。
ふむ、LAIの子会社だな。 登山家でもあり、フロンティアでも2峰の初登頂を記録している。
キャピタルに妻と娘が一人いる・・・か。
本人からのメッセージも添付されているな。」
起き上がった画像は今の時代にしては画素数が足りない雰囲気で、狭いシェルターのような所で40代の男性がしゃべっている。
「こんにちはシェリルさん。僕は今、地上高度290kmの場所でピバーグ(登山時の簡易宿泊)しています。実は娘がシェリルさんの大ファンなんです。もちろん我家は全員がファンですけど!お会いできるのを楽しみにしています。」くぐもった声が楽しそうに弾む。

「ふふ。」シェリルが小さく笑う。
アルトが続ける。
「ハイヴ(赤道上空を覆うフロンティアの特徴的な蓋(おお)い)に関しておさらいすると、 最近の研究ではバジュラがつくったものかどうか実はよくわからないらしい。
静止衛星軌道、だいたい3万6千キロぐらい上空だな、そのへんからみると、ぐるっと赤道上を蓋っているのがわかる。 ハイブの高度は衛星軌道と同じで、だいたい330から360kmだ。
地上とこの蓋いは2千本弱の柱、ワイヤーのようなものから、直径数キロのものまで色々だが、それらで繋がっている。
内18本が特に大きい。地上部分で最大直径約2km、衛星軌道あたりでは数100メートルに収斂する形で伸びている。惑星を囲う大きなホイールのイメージかな。」
アルトは、レポートの記事をかいつまんで読み上げる。

すこしの沈黙のあとにシェリルが続けた。
「ふううん、で、私が衛星高度で 『人類史上始めて衛星軌道まで自力で登ってきた男』 を迎える? と。」
「楽しい企画だ。」アルトがつぶやく。
「ううんん~、少しは気分が良くなったかなあ。 ねえ、フロンティアでのスケジュールだけど。 仕事は明日の大晦日だけで、あとはフリーにしてあるの。3日から打ち合わせとか入っちゃうけど、ゆっくりさせてもらいましょうね。」

「・・・でも、凄いわよね。バジュラの尖塔を自分の足で、2年半もかけて登って来たんだから。」
「俺はそんになには離れられない。」
「うふふ、元気付けようとしてる?」
「ちょっとね。」

二人を乗せた車は、ホテルのエントランススロープに静かにすい込まれて行った。



・・・・・・・・・・・


「これは・・・。 視聴率が取れるとかそんな問題じゃないな。 まるで映画のワンシーンのようだ。」
大晦日特番のために、早朝の新統合軍基地に陣取り、撮影カメラを向けるカメラマンはファインダーに写る人物に釘付けになった。

朝日に輝くVF25メサイア。 そして新統合軍とは違う、SMS仕様の身体にフィットしたパイロットスーツを身にまとうシェリル・ノーム。
彼女の特徴的なストロベリーブロンドが朝日に輝き、真冬の冷えた空気が彼女の吐息によってきらきらと光る。
「美女と野獣。 いや、銀河の妖精とメサイア(救世主)か・・・。」

カメラが追うシェリルは、やはりSMS仕様スーツをまとった、パイロットには珍しい長髪の男性とともに機体のチェックと、飛行計画を確認している。
やがてシェリルは、機上にあがり、コクピットのチェクを始める。
こまかい指示をしたのか、何事か大声で伝えながらタラップを降りて、彼女の機体を離れる先ほどの長髪のパイロット。
自らの機体に走り、乗り込んだところで、シェリルの機体を振り返る。
振り向いた彼に、いたずらっぽく投げキスをするシェリル。

バイザーを降ろし、彼女の機体のキャノーピーがゆっくりと閉まる。
機体が回頭し、タキシングを始める。朝日を浴びながら滑走路に進み始めた。

カメラマンはその瞬間にシェリルの顔付きが厳しさを増したのを逃さなかった。

シェリルの緊張した声が管制室に響く。
「管制!こちらクイーン727、システムオールグリーン! 離陸後高度一万メートルで大気圏離脱シークエンスに入る。」
「管制了解。 グッドラック! 行ってらっしゃい、シェリルさん!」
強力な推力を吐き出す、かん高い轟音とともに、シェリルの機体がフロンティアの朝に舞い上がった。

続いて、アルトの機体が滑走路に入る。
「ナイト1123、続いて出る。」
「早乙女中尉!さっさと行きなさい。」
「えらい差がないか?」
轟音が響き、アルトの機体も宙を目指した。


「やっぱ、かっこいいなあ・・・。」
カメラが2機を追えなくなってから、地上に残った撮影クルーの一人が、放心したようにつぶやいた。
「なあ。シェリルが操縦してるって、だけで、あんなにVFがセクシーに見えるものかな?」
あわただしく機材をかたづける同僚に続ける。
「彼女はなんだってパイロット。 しかも一番難しいVF(可変戦闘機)のライセンスなんて持っているんだ?」
機材を片付けるのに余念のない同僚が言う。
「そりゃあ僕らの為でしょー。こうやって最高にいい絵が撮れる。」
「お前いい頭しとるねー。」

チーム監督が声をかける。
「ほら、さっさとしろ!追いかけるぞ!!」
撮影チームはズングリとした旅客シャトルへと走った。



・・・・・・・・・・・・・・



「いいいいいいいいいやああああほおおおおおーーーーー!!!」シェリルの気勢がマイクを通じてアルトの耳をうつ。
急上昇をかけるシェリル。 大出力のVF25は垂直方向でのバレルロールのような軌道をも、難なくこなす。
彼女の操縦はリズミカルにロールを繰り返し、猛烈な勢いで上昇する。
「昨日、フォールド酔いで泣きそうだった奴は誰だあ?」
「自分で操縦桿を握ると違うのよ! 着いてらっしゃい!エースパイロットさん!」
「ったく、1G加速だって、ブリーフィングで確認しただろーに!」 アルトも垂直上昇にかかる。

VF25はその大出力と、エネルギー装甲、慣性キャパシタの応用により、自力での大気圏離脱が可能である。
まして、非武装の機体であれば重量的な制約もなく、ほぼ20分の上昇軌道で衛星高度に到達する。



「 きれい・・・。」
シェリルの機体は、目標高度に到達したところで水平飛行に移り、ゆっくりと回転していた。
今、彼女は、静かに回転する惑星フロンテア、星々の輝きの中心にいた。
「宇宙の真ん中にいるみたい・・・。」

回転する恋人の機体の傍らを、アルトのVFが落ち着いた軌道で進む。
「ほら、見えてきたぞ。あれが今日のステージだ。
 高度340km、ステージの高さとしても人類史上最高度じゃないのか?」

2機のメサイアは、ゆっくりと目標の標識灯を目指す。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


アルトが、先行しながら、設営の準備にかかっているスタッフにコンタクトを取る。
「こちらクインーン727、およびナイト1123。 銀河の妖精を連れて来た。
 現在、相対速度コントロール下にある。 5分で指定ポイントに着陸予定。着陸よろしいか?」

ザッというノイズ音の後、自動調整でノイズキャンセリングされた音声が入る。
「こちら、特設ステージ設営班です。
 デレクター?いいですか? ええ、シェリルさんのチームです。」
しばらく聞き取れないやり取りの後に、マイクを持つ人間が変わった様だ。
「設営デレクターです。実は・・・、
 マイケルさんが30分ほど前から行方不明になりました。 定時連絡後も順調に移動しているのは確認できたのですが。 ここから20キロ惑星側、下方向です。」
 位置ビーコンをロストした場所は正確に把握出来ているのですが・・・。」
アルトはキャノーピー越しにシェリル機を確認してから返信した。
「位置情報のアップを頼む。 ここからならVFで行くのが一番効率がいい。行って来る。
 新統合軍と、レスキューに連絡しておいてくれ。」
シェリルが口を開く前にアルトが続ける。
「シェリル、お前は残れ。 着陸してサポートに回ってくれ。」
「お断り!
 衛星高度では、特定のアプローチコース以外での単独航行は許可されていないはずよ?
 何のために私がウィングマーク(パイロットライセンス)なんて取ったと思っているの?
 有資格者に必要な仕事をさせない、なんて言わせないんだから。」


設営基地でやり取りを聞いていたデレクターが割って入る。
「そんな、シェリルさん!こちらで待ってて下さい。そちらのパイロットさんに任せて。
 万が一何か怪我でもされたら僕らが困りますし、40分もすれば後続のシャトルも上がって来ますから。」
シェリルが一喝する。
「あなた名前は!?  私は人命救助とタレントを天秤に掛けるようなスタッフと働きたくないわ!」
「な、なにを!こっちだって心配しているんだ! 責任はあんたが取るとでもいうのか?」怒気のこもった声でデレクターが返す。

「(ふう・・・)」声にならないため息を吐きながら、アルトが言う。
「了解、シェリル。とにかく付いて来い。」
 それと怒鳴るのは良くない、デレクターさんの言う事ももっともだろ?」
シェリルが素直に謝る「そうね・・・、ごめんなさい。」
「さあ、急ぐぞ!」

アルトと、シェリルの機体が再びスラスターを吐き、ハイブの下方へと向かった。

2機を見送りながらデレクターがつぶやく。
「クイーンとナイトか…。よろしくお願いしますぜ、騎士殿。」
それから舞台の責任者として、彼はスタッフに指示を出した。
「新統合軍に事態を通報しろ。 惑星軌道管理協会にも救助要請を。 ああ、あとでいいから局とスポンサーにも一報しとけよ。」
全員が無事で有りますように…。
お祈りなんてめったにしないんだが…。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


惑星フロンティアは、この高度で見渡すと、かっての地球にそっくりだ。
決定的に違うのが、このバジュラの尖塔と、惑星を細く覆うハイブだろう。
今、2機のVF25メサイアは、地上から軌道まで、まっすぐに伸びている塔のひとつに沿って、ゆっくりと下降していた。
足元に向かって伸びるその先は、延々と惑星フロンティアへと続いている。


低速での機体コントロールに適したガウォーク形態に変形し、徐々に指定されたポイントに近づく。

シェリルが、いま気がついたかの様につぶやいた。
「まじかで見ると大きな建造物ね。本当に垂直の壁がフロンティアまで続いている・・・。」


ビーコンで指定された位置は、岩だなのような構造物だった。 着陸すると同時に、2機はバトロイドに変形。
非武装であることを悔やみながら、アルトは、シェリルのバトロイドの前に出る。
そして、目の前の構造物の奥に続く壁面を見やった。
手前にマイケル・ベアの登山道具だろうか、カラビナの様な金属片が落ちている。
周囲の構造物と違う材質のそれは、新しく、輝いていた。
そして・・・、


「これは…。」アルトが絶句する。
「エアロックに見えるわね。」シェリルが後を続ける。
 センサーには熱源とか、危険な異常値の観測はないわ。」
「ゼントラーディ・サイズだな。マイケルは中に入った? ということか。 進むべきかな?」
「そうね。」

シェリルがあらたまって確認する、「中に入ったら出られない、なんて事にはならない?」
アルトが答える「中継ビーコンを置いていこう。 いざとなればこの強度ならバトロイドでも破壊できるだろう。  ・・・って言うか、やっぱりお前はここに残れ。」

シェリルは、またかという雰囲気を隠さなかった。
「アルト、何度でも言うわ。 私がウィングマークを取ったのは、あなたにまた置いていかれるのが嫌だったからよ。
 戦争をしているわけじゃないのよ?こんなところに置いていかれるほうが、よほど怖いわ。」

アルトは再びため息交じりの返事をした。
「・・・わかった。もう言わない。
 ただひとつ条件がある、俺が逃げろといったらとにかく逃げる事。てんでこ逃げだ。
 お互いの安全を信じて、まずは自身の安全確保を優先、いいな?」
「りょーかいです、 隊長。」シェリルが努めて明るく答えているのがアルトにはわかった。


エアロックのような構造物は軽い力で(バトロイドによる作業だが)押し開く事ができた。
2体のバトロイドが先へ進む。
頭部のヘッドライトが視界を確保してくれるが、コクピットの三次元スクリーンでの光学補正がなければほとんど何も見えない状態だろう。

そして少し進むだけで、すぐに巨大な空間に出た。
無重力状態とは言え、惑星を足元、下方向に認識していた二人には、突然巨大な穴が出現したように見えた。
「これは…、この塔はチューブ構造なのか?」
シェリルの声が続く。
「あらら・・・、すっごく大きなタテ穴ね。」


「表面は荒れているが、このスケールで見ると明かに人工的だな。」
アルトは、縦穴を覗き込む様に、バトロイドの頭部センサーを、下方の惑星側に向ける。
「チューブ構造の終点は、だいたい320km先、地上まで中空で繋がっているわけか。」
それから、上空、静止衛星軌道側へ頭部を回す。
「上方向の距離は・・・?   えッ!? さんまん・・・?」

「アルト!人がいる。」アルトをさえぎって、シェリルの声が響いた。
アルトが、シェリル機の頭部ポインターが指し示す方向を見やると、スポーツ用の軽装宇宙服姿の人影が、タテ穴の手前のプラットフォームに横たわっていた。



横たわる人間は、マイケル・ベアだった。
シェリルとともに機体から降りたアルトは、メサイアの非常用応急セットの中からダンボールサイズのパックを取り出し、展開させる。
手際良くマイケルを、この軍規格の簡易担架(軍関係者は口悪く、その形状から「棺おけ」とか「ひつぎ」などと呼んだ)に、横たえる。
マイケルのスーツの生命維持装置と、担架の接続を確認、アルトにしてみれば何度も訓練を積んだ手順だ。
先ほどのデレクターに、発見の報告を終えたシェリルが心配そうに、マイケルを覗き込む。
苦しそうな顔のマイケルだが、シェリルの存在に気がついた。

「シェリルさん・・・すみません、あとわずかな、こんな所で怪我をして・・・。リードを失敗してしまいました。 自由落下状態で壁面に叩きつけられて・・・。完全に自分のミスです。」
「いいえ。 間違なく、あなたは『歩いて』初めて宇宙に来た人間よ。すばらしい偉業をなし遂げたわ。」

モニターを読んでいたアルトが、音声で割って入る。
「両手足を骨折している。重症だが治療を受ければ大丈夫だ。 今、モルヒネを打った。 じきに救助隊も来る。」
マイケルはやっと穏やかな表情を取り戻し、シェリルを見つめる。
「ありがとう。 助かりました。  ああ、シェリルさん、あとでサインもらえますか?」
シェリルが優しく聞きなおす。
「ええ、娘さんに?」
「お願いします・・・、あと僕にも…。」
「わかったわ、今は休みなさい。」
シェリルがマイケルの手をとると、マイケルは満足気に目を閉じた。



マイケルの状態が安定した事を確認し、アルトがシェリルに話しかける。
「彼は塔の外で怪我をしたんだよな? どうやってここまで来たんだ?」
シェリルには答えが思いつかない。
「両手足骨折・・・だものね?」

「それと、さっきこの塔の、 チューブ内の大きさを計測したんだが・・・。
 地上方向に高度探信レザーを向けると三百何キロ、これは良い。地上までの距離だ。
 だが上空、静止軌道方向にレザーを向けると、三万八千キロ以上とかの数字が出て来る。
 計測装置は三重のセーフ機能が働いていて、計測ミスは・・・・、」
シェリルがさえぎる。
「ちょっと。どういう事?」
「この塔は、外側より内側の方が遥かに長い?って事だ。」
「・・・・・有り得ないわよね?」
「普通はな。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「 いずれにせよ怪我人もいる、とにかく早く離れよう。」

アルトは、ハイブ上方の設営班と会話を始める。
「こちらナイト1123、続報だ。 患者は両手足骨折の重傷。 鎮痛剤を打ってある。
 宇宙服の固定機能と、棺おけ・・・、いや簡易医療ポッドで安静にしているが、早急な治療が必要だ。 詳細データを送る。
 現在位置は塔の内部。中央が空洞になっていて、そこにすこし張り出したプラットフォームの上にいる。 支援はどんなスケジュールで到着するかわかるか?」

先ほどのデレクターから通信が返ってくる。
「設営班のランチ(連絡艇)が、あと13分で到着できる。 新統合軍はあと17分、惑星協会の救急艇が21分。 いずれもさらに時間短縮が可能との返信だ。
 なにせ、銀河の妖精がお待ちかねと言ってあるからな、誰もが一番乗りしたいらしい!」
(案外頼りになるタイプか?)アルトは苦笑しつつ、返答する。
「まかせた、現場で待機する、急がせて・・・?」

壁面から伝わる気配を感じ、塔の上空を見上げる。
やがて、激しい振動が真空のなかでも伝わって来る。
塔の内部が音も無く、木造船のように軋む(きしむ)のがわかる。
「設営班?いまの振動は何だ?」アルトが怒鳴る。
マイケルの担架のそばに立つシェリルに、座るように促す。

「振動?何も…」デレクターの声がやけにのんびりと聞こえる。
「ばかな、まだ揺れている!」
「こちらでは何も観測されていない! いやまて…、君達の位置信号が不安定だ…どういう事だ?」

「くっ」ちいさく舌打ちをしながら、アルトは行動を起こした。
「シェリル!VFで脱出しよう。マイケルは俺が運ぶ。」

「了解!」 先ほどの指示を覚えていたのだろう、シェリルがすぐに自分のVFに向かい走りだす。
が、何かがシェリルの足元で水滴の様にはねた。
いつの間にか、プラットフォーム全体が少し濡れている?

(濡れている?さっきまでは何もなかったぞ! 真空で無重力で、床に広がる水? あるわけがない!)
「シェリル! 飛べ! 何か下にいる!」

「え?」アルトを振り返るシェリル。 が、その時、ふわっと透明な水膜の様なものが起き上がり、シェリルを取り囲んだ。
「!!?」わけがわからず絶句するシェリル。
同時にアルトの前にも、覆いかぶさろうとするかのように別の水膜が壁のように立ち上がる。
考える前に、アルトは行動に移った。
スーツの足首に格納されていた、パイロット標準装備であるザバイバルナイフを、閃光とともに引き抜き、目の前の壁をなぎ払う。
水膜は、粉々に、あっさりと崩れ去り、足元の水溜りのようなそれに戻っていく。
(もろい?)
次々と起き上がる薄い壁をなぎ払いながら、わずかに離れたシェリルの元へと走る。

シェリルも、アルトの行動を見て、すぐさま自らのナイフを抜き出し、薄膜を切りつけ始めた。
ピンポイントバリアー理論を応用した二人のパイロットナイフは、緊急時にVFの脱出装置の切断などもこなす強力な代物だ。

だが、「水膜」はしだいに、執拗に、攻撃的な動きになって、襲いかかり始めた。
二人を取り押さえようとするかの様に、薄膜から、徐々にロープ状の触手になったそれが、絡み付いてくる。

前世紀のアニメじゃあるまいし!
アルトは、半透明な触手をかき分ける様にして、辛うじてシェリルの元にたどり着いた。
すでに足元には、液体が広がっている。ナイフをふり、透明な触手を切り払うたびに足元が徐々に重くなってくる。
シェリルが叫んだ!「アルト、逃げて!こっちは何とかする。マイケルを連れて行かなきゃ!」
アルトは、シェリルとほぼ背中合わせに立ち、次々と伸びる、触手を振り払い、断ち切る。
「バカな!二人でなきゃ無理だ。」視界の隅で、マイケルの位置を確認するアルト。
だが、同時に自分の右方向に、おおきな塊が盛り上がったのも見逃さなかった。
すぐさま、ぐっとシェリルを自らの後ろにまわし、かばう。 連続した動きでアルトは、右方向に勢いよくナイフを向けた。


ひゅん!!

次の瞬間!アルトの右肩に衝撃と激痛が走る。
「ぐっ…」、呻き(うめき)ながらも、シェリルを背後にかばい続けるアルト。ナイフは今の衝撃で飛ばされてしまう。
(しまった!!)
右肩に刺さったダーツのようなものを、力いっぱい引き抜く。
激痛とともに、とたんにアルトの意識が朦朧としてくる(何だ?くすり?)。
ふるふると流動する半透明の液体が、まさに人が「つぶて」を吐き出す様に噴出したものだ。
「アルトっ! アルト!大丈夫?」アルトをとっさに支えるシェリル。
ひるんだ彼女のナイフも、伸びて来た触手に叩き落とされてしまう。
「シェリル!逃げろ!!」低くうなるアルト。

だが、いつのまにかそれだけ集まったのか、いまや圧倒的な質量をともなった水膜と触手が、支えあう二人をどっと包みこんだ。
「嫌あああー!!」 たまりかねてついに叫び声をあげるシェリル。
もはやもがいても振り払える状況ではない。

かすむ視界のかげに、アルトはマイケルのかんおけ(簡易担架)が、液体に取り込まれて、自分達と同じく、滑る様に運ばれて行くのが見えた。
押さえ込まれ、自力で動く事もできない二人には、きつく抱き合う以外に方法はない。
「シェリル、じっとしていよう。多分何もできない。」アルトの声には苦痛がにじむ。
「アルト、大丈夫なの?」震える声を隠しながら、気丈にシェリルが問う。
「ああ、大丈夫だ。」
「離さないで、お願い今度は離さないで。 私も離さない。」シェリルの腕が、さらにぎゅっと力をこめるのがわかる。
「わかっている、何度でも言う、俺はお前の事愛してる・・・。」
抱きしめたシェリルの返す言葉が、マイクではなく、スーツを通して、じかに聞えてくるのをうれしく思いながら、アルトは意識を失った。

アルトとシェリル、マイケルを飲み込んだ液体は、紫色に輝く独特のフォールド光を発しながら、その塔内のプラットフォームから消えた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



アルトが次に気が付いた時、正面には大きなフロンティアが青く輝いていた。
アルトの頭上で、フロンティアを向くシェリルの顔は、彼女のヘルメットバイザーに青く写りこむ地球光で見えない。
シェリルが、自分の頭を膝上に抱え込みながら、尖塔の外壁に座り込んでいる事がわかるのに、少し時間がかかった。

アルトは仰向けに横たわっている。
マイケルの担架も無事のようだ。
(シェリル、おれは大丈夫だ・・・) 伝えようと思うが、体を動かす事ができない。


シェリルがスーツの発信機の緊急バンドを使い、救助を呼掛けている。
「メーデー、メーデー。 こちらは、MBSの取材で、衛星軌道上のハイブに取り残されたシェリル・ノームです。 現在遭難状態にあります。」
 重症者2名、応急処置は施してあります、2機のVFはロスト・・・。」
「メーデー、メーデー  ・・・・・・。」


そして低く、涙ぐむ声になる。
「誰か・・・、早く来て。 アルトが死んじゃう・・・・。」

(俺は大丈夫・・・)
伝えようと思うが体が動かない、声もでない。

そうして、うなだれたシェリルが、アルトのヘルメットに触れる。 何度目かで再びアルトを覗き込む。

アルトには泣きはらしたシェリルの顔がやっと見えた。
目が合うと、シェリルは再びその目に涙を潤ませた。

シェリルの目が優しくアルトに問いかける(大丈夫?)。
アルトは渾身の力をこめて微笑み返す(大丈夫だ)。


音もなく現われた、「N.U.N.SPACY」 の白文字が輝く、新統合軍救助艇の、限り無く力強い光軸が二人を捉えたところで、アルトは再び意識を失った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


16時間後。
惑星フロンティア総合病院の一室・・・。

「お見舞いに来ました。」
しかし、現れたルカは、白衣を羽織り、レポートの電子ペーパーとパッドを抱えて、どちらかと言うと徹夜の会議を抜け出して来たという雰囲気だった。
そう言えば、この総合病院はLAI系の経営だ。

自分で適当な椅子を引張り出し、二人のベッドサイドに腰掛ける。
アルトの右肩には、治療器具が付いている。
シェリルも安静を指示されて、横になっていた。

ルカが続ける。
「今回は、弊社が支援している登山家の救出に尽力頂いてありがとうございます。
 重症ですが、骨折だけですので、まあ一週間もあれば彼は退院できます。
 今は奥さんとお嬢さんが、看病でいらしてます。」

「お二人の救出後に分かった事を順番に報告しますね。
 現在、お二人の登った12番シャフト、 ああ、バジュラの塔は、順番に番号を振ってあるんで、あの塔は12番になります。
この外見は、変わっていません。つまり外側はいままで通り。
今回初めて内部の調査が出来ましたが、先輩の観測通り、相変わらず内側の方が長いですね。
 ただ長さは一万四千キロまで縮まりました。内部で何らかの崩落の様な事があり、埋まってしまった様な印象です。
 先輩が感じた震度はこれが原因でしょう。」
 
「次に、お二人が闘った液体ですが、これはなんらかの安全装置だったと思われます。
 内側で崩壊だか、あるいはデブリのようなものが塔を崩した場合に、 内部の環境を維持するために塔が自壊して、破損したスペースを埋める。 安全装置が内部にいる生物を保護する。
 環境が安定すると放出する。その一連の動きがあのような動きになったと思われます。」

「泣き叫んで暴れる子供を、安全なところに押し込もうとする保護者みたいなもんだとでも?」
アルトが苦い顔で肩をさすりながら言う。

「そのために・・・、なのかどうかはわかりませんが、先輩に打ち込まれたダーツ状のものには、かなり荒い作りの鎮静剤が仕込まれていました。
 あわてて合成したのかもしれません。普通では立って居られないぐらいの薬量でした。」
 あと、興味深いのは、救出される直前に、塔の内部から外壁に、ビックリするくらい短い、超短距離フォールドをしています。ざっと10数メートル。」

シェリルの手がぎゅっとアルトを握る。

「結局あの塔は何だったんだ?」アルトの質問にルカが答える。
「分かりません。 ただ構造を説明すると、あの塔の内側と外側は別の構造物だと言う事です。」

「よくわからないな。ならば内側と外側はどうやって繋っている?」
「そうですね、例えば常時接続のフォールドということでしょうか。
隣りの部屋に行くのに、ロケットが着いた椅子を準備して、カウントダウンしてから出発。 もちろん扉はブチ破る。 これが今の我々のフォールド技術です。
一方、ここにあるのは、「ドアを開けてひょいっととなりの部屋に入ればいいんじゃない?」という事ですね。
数10メートルという超高精度のフォールド、常時接続が可能なフォールド、 それらが可能とわかっただけでも、かなり興奮する成果です。
塔も中空であることは分かっていましたが、ずっと内部に入る方法が分かりませんでした。 が、一度入口を見つけてしまえば同じような構造を探す事は容易です。
未調査の塔があと1ダース以上もありますからね。しばらくは大忙しです。
今回の事件で、我社でも調査、研究の優先順位が上がりました。

個人的には、この塔は、フォールド・チューブ、フォールド・サブウエィに当たるものじゃないかと考えています。 『電車で隣の恒星系に行けるかも?』 って、ことです。ワクワクしませんか?」

「・・・・・。」
アルトとシェリルの反応は、ルカの興奮に比べ芳しくない。

ルカも話題を変えた。
「それにしても特注ですか? 病室のベッドが、キングサイズのダブルベッドで、かつ、並んで寝てる患者さんって初めて見るんですが…。」

ベッドの上で、さきほどから、かなりアルトに密着していたシェリルが返す。
「なによ? お正月だから寝て過ごすの! 話がすんだらさっさと行きなさいよ。」シェリルはさらにアルトの腕に自らをすり寄せながら言う。

ルカが負けじ?と、続ける。
「ああ、その前にプレゼントの話を。 カナリアさんから、退院は、一週間以内ならいつでも自分達で決めて良いとの伝言です。 僕からは会社の最新映像プレイヤーでも届けますよ。
それと・・・。 」
 
話をさえぎるアルト。
「ああ、ルカ? 話は尽きないが、部屋を出る時はそのカーテンを引いて行ってくれ。 ドアもちゃんと閉めてくれよ。」

(ふうっ)「はいはい、ごゆっくり。」
ルカは資料を閉じて部屋を出た。
廊下は、小春日和の穏やかな日差しがまぶしい。
ルカがつぶやく「今年は楽しいお正月になりそうだ。」

「ちゃんとドアしめて!!」
「はいはい。」




   FIN






エンドロールは「天使になっちゃった」で、よろしくお願い。

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  1. 2012/01/22(日) 10:07:32|
  2. 作品(マクロス小説)
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プロフィール

kikikix

Author:kikikix
アルトとシェリルでSF風ショートショートがメインです。
ちょこっとフイギュアとかに逃げる時があります。
SSは「~年表」が作品リストになってます。
フィギュアは?まあこういうのもフイギュアって言ってOK?

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