FC2ブログ

ううん酸

とりまシェリル・ノームのファンサイトです。うさんくさい?

アルシェリSS「犬とホットドッグ」

死ネタ注意。
だけど激烈なとこは皆無ですので、あきちゃって最後まで読めない可能性が高い。
・・・ので、とりあえず続きから。

↓↓↓


「犬とホットドッグ」

ここにはめったに来ない。なだらかな丘、引く刈り込まれた芝と続く白い石の列。
そう大きくはないが広がった枝が木陰をつくる近くに、それはあった。
久しぶりに来てみても、相変わらず添えられた花束や写真などでいっぱいだった。
メッセージカードもある。硝子ケースに納まったキャンドルも。その灯は本当に燃えているのかホログラムか? 小さい炎が揺らぎ続ける。
小さな、キャラクター化されたホログラムのアイコンが空中に浮かぶ。
カードのいくつかにホログラムシールが貼られているのだ。浮上ったキャラクターがくるくると回るたびに、ストロベリーブロンドの巻き毛が揺れる。
あの髪色は今でも彼女のシンボルだ。


やはりここには居たくない。白い石、そよぐ風がわずかな草いきれを紛らわす。
雑然と、だがどこか整然と添えられた花やキャンドル、メッセージカード。そのすべてが彼女を愛する人々の思いなのだろう。
まだこんなにも愛されている。

いいや、それでももう何年も経つ。俺の傷も薄れたはずだ。
だがこんなにも痛む。

ひゅっ。
うって変わった冷たい風が彼の心をもさらった。一瞬の風が彼に冷気を浴びせる。
冷たい手に心臓をつかまれた様な恐怖が彼を襲う。
しばしの苦痛。胸の痛みが和らぐのを待つと、やがてじわりとした暖かさが彼を包む。
そう、彼女は彼にとって太陽だった。
その笑顔が自分に向けられるだけで心が震えた。
もう今はいない。

「ウォン!」
えっ? 聞き慣れた犬の鳴声にびっくりする。
「ジョン?」
いや、ジョンにそっくりなその犬は、激しく尻尾を降りながら車椅子に走り寄る。っと背を伸ばして、彼の手をなめた。何処から来たんだ?
「ジョン?」いや、ジョンによく似たその犬は、瞳をまっすぐに彼に向ける。

人生で一度だけ飼った犬。子供達が二人のもとを巣立った数年後に新たに迎えた家族だった。
ジョンは明らかに彼女を優先した。
二人が同時に呼べば必ず彼女の元に走った。
「ジョン!」彼の叱責に犬は困った様な顔をしてみせる。
あははっ、そんなに怒っちゃだめよ!
彼女が犬を抱きながら笑う。
「ジョンはどうしたらご主人様が喜ぶか知ってるだけだもんね~?」ジョンの瞳がまっすぐに彼女を見つめ、それから彼女の頬をなめた。

「ジョン? 久しぶりだな、元気だったか?」彼の膝に前足をつき、犬が背伸びをして彼をなめようとする。
ははっ、近付いた犬の顔に語りかける。
「ご主人様はどこだ? ジョン?」
彼の言葉に応じる様に犬が丘の上をのぞく。
風が吹く。丘の上に女性がいた。長いスカートと日傘がシルエットを作る。
「ウォン!」
・・・アルトが呟く前に、犬が元気よく走り去る。
アルトの呼び掛けに答える事もなく、犬は女性の元に駈け上がって行く。「ワン!」追い付き、まとわりつく犬のふるまいに満足気に応えると、その女主人が丘の影に消えた。

ジョンは彼女がいなくなったあとに、すぐに旅立ってしまった。
あの犬が今どこかにいるとすれば、それはやはり彼女のそばにいるはずだ。


帰らなければ。
今日の午後にはランカが久しぶりに訪ねてくれるはずだ。
孫の一人が空港まで迎えに行ってくれる予定だった。シェリルの髪色を受け継いだ一人だ。

自走式の車椅子をゆっくりと動かす。
先ほどの犬と女性が進んで行った、いつもの方向とは違う道を選ぶ。少し遠回りになるがこの道でも車の場所までは戻れるはずだ。

ゆっくりと車輪が回る。電動のそれは、危なげない歩みでしっかりと整備された小道を進む。
そう言えばあの遥かな過去で、彼が最初の大怪我をした時、シェリルが病院に駆け付けてくれた時も、自分は車椅子だった。
真っ赤な顔で、死んじゃだめって懇願された。
それから車椅子のアルトを見つめて、早乙女アルトは一人だけなのよ・・・って。
ははっ、何を言う? シェリル・ノームだってたった一人だけだ。
そう、あの時も車椅子だった。
ここ数年で急に足腰を痛めている・・・これを使い始めたのはつい最近だが。

「探している人はみつかったの?」
ふと気がつけば、小さな和装の女の子が後ろから彼に追いついていた。
アルトは少し驚きながらその子に応える。「君は、なぜ僕が誰かを探してるって思うんだい?」
すでに彼の前に歩み出た女の子は、振り向いて、半ば後ろ歩きで応える。車椅子のおかげで視線はほとんど同じ高さ。
黒髪の小さな顔がにこやかな笑顔を結ぶ東洋系。どこかで会ったか?
「あら? 顔に書いてあるわよ? あの人はどこって。」
女の子の声はどこか大人びている。
「どう致しまして・・・」苦笑しながらアルトが応える。
そして小さい丘をのぼりきると、下の広場には屋外ステージと、はなやかな露店のお祭りが広がっていた。人々が集まって来る。

「今日はね、歓迎ライブなのよ。とっても久しぶりに、トップスターだった『あの子』が歌ってくれるの。」
「誰?」アルトの問いには応えずに、少女は話を続ける。
「さっ、私も急がなきゃ。パパが待ってるし。あとでね、アルト!」少女は坂を駆けおりながら、一度だけ振り返り、手をふる。
「えっ?」少女に名前を呼ばれて戸惑う。あっけにとられて、でもアルトは少女を見送るしかなかった。

一人で車椅子をゆっくりと前に進める。こんなところに広場なんてあったか? あったとしても駐車場かなにかだったのでは・・・。
「みよ!」少女が消えた人垣の向こうから、男の声が聞こえた。
「美与・・・?」アルトが呟く。
もう一度少女を探そうとする。だが、いつのまにか、たいそうな人の流れに取り込まれていた。アルトは電動の車椅子を操る。
車椅子のアルトに、皆がさりげなく道を開けてくれる。ザワザワと談笑する男女、走りださんばかりの子供もいた。
「あっ・・・」
尻尾を振る犬が垣間見えた。ジョン? だが絶え間なく続く流れに逆らえない。
犬の主人は? 日傘を閉じて歩く姿が見えた気がしたが、ジョンの後ろ姿とともに見失った。

とりあえずこの人の流れは一方向へ向かっている・・・目的地で探せるかもしれない。
そう、挨拶をするだけだ。
『やあ、よい犬ですね。昔そっくりな愛犬が僕にもいました。妻と大の仲良しでしたよ・・・』
アルトは人々と一緒に進んだ。


やがて、ライブ会場の華やかな看板がみえた。アーティストの名前は、車椅子のアルトからは見えなかった。アルトに気が付いた男性が、スタッフだろうか、彼を見晴らしのよい並びの席に案内する。
車椅子だからか? 会場が見渡せるいい席だ。

しばらくすると、じょじょに周囲の席も埋まる。あっというまにほぼ満席となる。
ざわざわと開演への期待が会場の空気を満たす。
ライブ・・・最後のライブはいつだったか。あんなにあった彼女のライブのどれが最後だったか思い出せない。
まいったな、帰ったら娘に聞いてみようか。


「ワン!」あしもとにジョンがいた。
「ジョン! こんなとこに? ご主人様はどうしたんだい?」アルトは乱暴にジョンの首を掻いてやる。
「ウォン!」嬉しそうに鳴いたあと、ジョンが興奮した息を整え、舌をだしながら小さく吠えた。
ご主人様、ここです、ここ!
「ワン!」

「お待たせ。」
アルトの隣りに女性が座った。

「ああん、そんなこと無いわね。待ったのはあたしだもの。」女性が小さく座り直す。抱えていた紙バックからホットドックを取り出す。
「ジョンにはこれ。プレーンにしてもらったわ。」
フフフッ、楽しげなハミングのあとに声が続く。
「アルトはチリチリドックでよかった? スーパーチリもあるわよ?」
「シェリル?」やっと彼女に振り向くことができたアルトに、シェリルが応えた。
「そっ。」
いつもの柔らかいストロベリーブロンドと、紺碧の瞳、なにものにも変えられない笑顔。

だから・・・、アルトはもういちどその名前を呼びながら泣いた。
「シェリル、シェリル」
もちろん、彼がシェリルの胸で泣いているあいだに、ライブはいつものフレーズで始まった。
やさしい声で、「あたしのうたをきけ~」って。



FIN




ロバート・A・ハインラインに敬意を表して。
わりと古典ネタですが、犬とホットドッグが出てくればこれはハインラインの「盗作よ!!」って感じ?
以上いいわけ。ハインラインで「ゾウを売る男」ってのがありましてね。

でもこの話は、サヨツバの映画公開を待つ間に考えたハッピーエンドの一つでした。
ちゃんとハッピーエンドでしょ?
(泣)



スポンサーサイト



  1. 2015/06/27(土) 07:33:47|
  2. 作品(マクロス小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<本日はガッコ系 | ホーム | アルシェリカモォォォ━━━━━(屮゚Д゚)屮━━━━━ン!!!!!! >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kikikix.blog.fc2.com/tb.php/1093-27fa2aba
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kikikix

Author:kikikix
アルトとシェリルでSF風ショートショートがメインです。
ちょこっとフイギュアとかに逃げる時があります。
SSは「~年表」が作品リストになってます。
フィギュアは?まあこういうのもフイギュアって言ってOK?

カテゴリ

未分類 (16)
日々 (1022)
アルシェリ年表(小説SSリスト) (5)
作品(マクロス小説) (121)
拍手返事 (33)
菓子箱バルキリー (22)
シェリルふいぎゅあとか立体系 (376)
いただきもの (14)
リンクフリーです!リンク集 (3)
お絵かき (21)
3周年! 薄い本大作戦 (72)
4周年! 紙人形と薄い本作戦 (51)
女子はいつ腐るか? (16)
けいおん!(りある (3)

最新記事

月別アーカイブ

くんたっしゅ

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QR